オーベルジュ Né (The Ridge)

Location: 新潟県新発田市
Date: 2025
構造: 浜田英明構造設計
照明: New Light Pottery
グラフィック: LINEAR NOTES(中山慎介)
施工: 熊谷建設
設備・電気: 渋谷電設
空調設備: ダイキンHVACソリューション
給排水設備: 宮下設備
厨房機器設備: 大和冷機工業
左官・タイル: 阿賀グローバル
瓦(安田瓦): 丸三安田瓦・マトー
建具: 高橋建具
家具: 鈴木工藝
家具・椅子: ISANA(イサナ)
畳: 高野畳
カーペット: 堀田カーペット
金物・取手:  堀商店
竹細工: ちくわのまんなか舎

新潟県新発田市に計画された、一日一組限定の宿泊型レストラン(オーベルジュ)である。「Né」という名前には、日本語で“根”、フランス語で“生まれた”の二重の意味が込められている。

初めて敷地を訪れたとき、広がる田園風景と冬の雪景色が深く印象に残った。この場所でしかつくれない建築とは何かを考えたとき、地域の風土や素材、ここで生きる人々の技術と向き合うことが、その答えに近づく道だと感じた。レストランで提供される「食」と同じように、建築もまた“この土地で採れたもの”でつくることができないか―その思いから設計は始まっている。ありきたりの素材や工法ではなく、身のまわりにある手の届く範囲のもので建築をつくること。それは地域に根ざした「つくる」という行為そのものを再発見する試みである。新しい建築は新潟の大地にしっかり根を張り、その延長として存在したい。敷地の眼前に広がる田んぼ、そしてその風景をかたちづくる「畦(あぜ)」や「畝(うね)」のかたちを手がかりに、この土地にふさわしい建築のあり方を模索した。そこから生まれたのが、〈Né〉という名にふさわしい、風景と共に呼吸する建築である。

眼前に田園が広がる敷地で、田を分ける「畦」に着目し、新潟の大地の延長としての建築を構想した。土を盛り固めて風景をかたちづくる営みを建築へ置き換え、現地の土を採取して半年以上寝かせ、発酵させたのち内外装の土壁として用いている。他の土地の素材を持ち込まず、その場の大地から建ち上がることで、風景と連続する建築を目指した。

建物の基礎をどのように作るかは、設計初期からの大きな課題であった。一般的にはコンクリート基礎が使われるが、新潟の大地と建築の関係を考える中で違和感が生じた。敷地の支持地盤は深く、通常であれば鋼管杭を打ち込む必要があるが、土中の流れを断たず、建築が自然へ還ることを見据え、コンクリートを一切用いない方針とした。代わりに、木杭を地中に多数打ち込み周辺地盤を締め固め、土と丸太の摩擦力で建物を支持する群杭形式を採用。さらに杭の打ち込み精度を高め、杭と土台を直接一体化させる構造とした。従来のコンクリート基礎工事で発生する掘削や残土処理を不要とし、鋼管杭設置や残土処分のコストを実質ゼロ化している。